「摂食障害かも?」と思う人のためのノー・ナンセンス・ガイド

この文章は以下のサイトを翻訳したもので、作者はBさんというかたです。翻訳はBさんの許可をえて貼り出しています。

https://sites.google.com/view/the-no-nonsense-guide/guide

 

はじめに

このガイドは、運動アディクション·食事制限の度が過ぎているのではないかと困っている方のためのものです。自分はそうであるかどうかはっきりわからないばあい、下の「摂食障害の症状」のところを読んでみてください。

なお、ここに書かれているものは、医学的·法律的·経済的なアドバイスではありません。ぼくはあくまで普通のネットユーザのひとりです。もし摂食障害のため危険な状態にあるのであれば、専門的な治療を一刻もはやくうけてください。

このトピックについて私の意見をもっと知りたいかたは、こちらのブログをご覧くさい。

また、私への連絡は、info@nononsenseguide.netにお願いします。

 

摂食障害の症状

食事についてのこだわり

もしあなたは自分の中で、何食べるか·いつ食べるか·どうやって食べるかについて度がすぎるこだわりをもっているのであれば、摂食障害の可能性があります。たとえば:

  • 医学的や道徳的、宗教的な理由がなにもないのにもかからわず、食べ物のグループ(乳製品·グルテンフリー·糖質ゼロなど)を完全に排除する
  • 食事をスキップする
  • 決めた時間でしか食事をとらない
  • ちょっとても多く食べたら、次の食事を減らす
  • ローカロリーの食べ物や飲み物を大量にとって、空腹をおさえる

ぼくは、特に理由もなくベジテタリアン(乳製品·卵以外動物性食品をとらない食生活)をしていました。ランチを食べず、夕方6時までに絶対晩ごはんは食べません。外食するなら、何日も前もってカロリーをコントロールしていました。また、毎日たくさんコーヒーを飲んで食欲をおさえていました。

運動についてのこだわり

食事のほか、特に理由のない過剰な運動やおさえられない運動衝動も、摂食障害の可能性が高いです。ジムのルーチンがきびしかったり、絶対にエレベーターにのらなかったりといったことです。たとえば:

  • きびしい運動のスケジュールをたてて、休みの日を考慮しない
  • 病気や怪我でも、天気が悪くても、サボることを絶対ゆるさない
  • どこに行くにしても歩いて行く、またははわざと遠回りしたりする
  • じっとすわっていることができず、リラックスすることもできない。いつも立っていたり、歩き回したり、そわそわしている
  • 他の人より運動量が多くなければ気がすまない

ぼくのばあい、病気や天気が悪いときでも絶対毎日最低限5マイル(注:約8キロ)を走ったり、少しても多く歩くためにオフィスの近くのスターバックスを素通りして遠くのスターバックスに行ったり、じっと座っていないといけないと思って車に乗るのが大嫌いでした。

その他の摂食障害のあらわし

普通の人でも、食事や運動に気を使って、上記のことがみられるばあいがあります。しかし、複数の症状にこころあたりがあるのであれば、問題ありの可能性が高いでしょう。まだわからないと思っているのであれば、以下の事象がご自身にあてはまるかどうか、考えてみてください。

  • あらゆる基準で体重や体脂肪率が標準以下
  • 空腹の感覚があまりわからない
  • 食べ物に関連すること、例えばスーパーに行く、料理を作る、前に食べたものなどがよく頭の中にある
  • カロリーや体重などの数字がきになる
  • 運動についてのこだわりを他の人にいうのがはずかしい

ぼくの場合、いろんな標準によって低体重であり、お腹がすく感覚がなく、スケジュール通りに食事をとっていました。また、OCD強迫症)のような変な運動についてのこだわりがあり(毎日前の日より階段をのぼる段数が多くなければ気がすまない)、自分のキッチンに入っている全てのもののカロリーを熟知していました。

上記の症状が一つでもあてはまり、また食事や運動について過剰なこだわりをもっているのであれば、あなたは多分摂食障害です。性別や運動能力、BMI指数がいくつなのかとかは、摂食障害であるかどうかとは全く関係ありません。

 

摂食障害の誘因

ラッキーなことに、どうして摂食障害になったかはあまり大事ではなく、障害の原因がわからなくても、なおすことはできます。それについては、「摂食障害の回復」のところをみてください。

飢餓反応

一般的に、摂食障害は精神的な理由ー痩せたい·主体性をにぎりたい·過去のトラウマや虐待から自分をまもりたいなどーでひきおこされると思われています。この認識はわるくいえばまったくの見当違いであって、よく言っても不十分です。

もっと事実に近い解釈はこうです:食事を制限する行為や運動したいというおさえきれない欲望は、飢餓反応が暴走した結果です。実験によれば、上でならべた異常な心理状態と行為は、すべて実験室で人為的につくりあげることもできます(動物でさえその対象です)。一部の人間には、ある条件のもとで「食事制限·活動の促進」という本能が触発されることが示唆されています。

体重の変化もないのに、なぜ脳は自分は飢餓状態におちいたと認識するのでしょう?その理由としてもっとも可能性が高そうなのが、「体脂肪セットポイント」理論でーー脳は人体の体脂肪率を一定だと認識していて、もしなんらかの理由で体脂肪率が減ったりしたら、飢餓状態だと認定するようになっています。

多くの人の脳は飢餓状態では「食べ物を増やす·活動量を減らす」モードにはいります。つまり。その人たちは飢餓状態におちいたらたくさん食べて、たくさんやすむようになります。一方で、一部の人の脳では「食べ物を減らす·活動量を増やす」モードになります。この一部の人が摂食障害になる可能性にさらされます。

生物学的な解釈

「食べ物を減らす·活動量を増やす」モードの存在について一つの有力な説によると、一部の人の脳では、飢餓状態を正しく察知できても、ホルモンがそれにふさわしいうごきができなくなっています。食欲と満腹感覚を制御するホルモンが複数存在しますが、一部の人にとって、体脂肪が減るとそれらのホルモンをうまくつくることができなくなるようです。

もう一つの説は、「食べ物を減らす·活動量を増やす」反応は生物進化の結果だと主張します。環境の中の食べ物が少ないと、人間の「マイグレーション本能」が触発され、「ここにはもう食べ物がないから、エネルギーを温存してほかの土地に行こう」というものです。

生物学の学説は、摂食障害からの回復とほとんど関係ないので、さらにならべません。かんじんなのは、摂食障害脳は飢餓モードになっていて、それが過度な食事制限と運動したい衝動の原因と知ることです。飢餓状態からの脱出を目指しましょう。

その他の理由

ほかにゆがんだボディーイメージをもっていたり、過去に虐待やトラウマなど問題をかかえているのとしたら、それは摂食障害とわけて治療なりなんなりをすすめるべきでしょう。その前に、飢餓反応をなんとかすべきです。そうしたらほかの問題も今より対処しやすくなります。

 

摂食障害からの回復

いい知らせとしては、摂食障害をなおす方法は単純明快です。飢餓反応をオンからオフにするために、

  • 食事量を増やす
  • 運動量(日常生活レベルの動きも含めて)を減らす
  • 体重(体脂肪)を増やす

ことをすればいいのです。

一方でわるい知らせとしては、これを実行するのはとてもとてもむずかしいことです。普通の人なら、「もっと食べて、動かないで、体重を増やす???そんなの余裕じゃん???」というかもしれませんが、普通の人の脳は飢餓反応で暴走したりしていませんので、無視しましょう。

回復と恐怖心

食事を増やす、運動を減らす、体重を増やすことをがんばることをとても恐ろしく感じるでしょう。脳は、「飢餓状態ですよ~エネルギー温存しなきゃ」とあなたを説得しようとしているのです。それと逆な行動を取ろうとすることはとてもまちがってると感じるでしょう。

でもさいわいなことに、(1)恐怖心にうちかつ(2)体重を必要なだけ増やす、という順番でやらなくてもいいのです。むしろ、(1)体重を必要なだけ増やす->そしたら自然と(2)恐怖心がおさまる、ようになっています。

この気づきがぼくの回復のキーとなりました。とても大切なことなのでもう一度いいます。セラピストやカウンセラーの治療をうけるとしたら、食べ物や運動についてのこだわりを超えるように、何年もついやされてしまうでしょう。順番が逆です。飢餓反応をなおすことで恐怖にうちかてます。

今自分のできることで恐怖をやわらいてみましょう。ぼくは、お腹をすかせないことを1年だけがんばって、それでも嫌だったらもとの自分ルールにもどればいいと思うようにしていました。もちろん、1年じゃなくてもいいんですが。

回復と体重

どれぐらい体重を増やせばいいのでしょう?その答えは、あなたの精神状態の変化の中にあります。体重が増えるのにつれ、食事を制限する欲望がおさまってきます。ちゃんとした時間でおなかがすくようになって、おなかが空いたら何かを食べることに対しての抵抗もなくなり、また、昔の自分ルールが理解しがたくなってきたら、もう回復も近いでしょう。

実験によれば、食事を制限する欲望が消える時の体重は、「安定時」の体重よりすこし高い(もちろん、その体重も人それぞれです)と言われています。このちょっと高めの体重をすこしの間(最低限12ヶ月間)維持すべきです。そうしたら、何もしなくても体重が「安定時」体重に落ちつきます。

例えば、体重が65キロまで増えた時、制限しようとする欲望がおさまったとします。その体重で一年間いたら、ダイエットなどしなくても、徐々に体重が56キロまでに落ちるかもしれません。食事の摂取量や運動量で、体が自然に調整しているのです。

体重が変化する時に、意識的に体重をコントロールしようとしてはいけません。そうすることは摂食障害をまたひきおこすだけです。また、増やさなければならないのは体脂肪で、脂肪じゃなくて筋肉をつけても問題は解決しません。ダイエットなどして回復したての体重を落とそうとしないでくださいー摂食障害がもっと強くなってまき戻ってきますから。

回復と食事

回復期間中に何を食べたらいいですか?正直体重さえ増やせればなんでもいいのです。本当です。それがいちばん大事なことです。食べる量が足りなくて体重が増えないままでいるのは、障害を長引かせるだけです。

ドーナッツやポテトチップスをたらふく食べることと、栄養士が設計してくれた「健康的」な体重増加のためのプランがまったく同じだといいませんが、ジャンクフードを食べることと体重が増えないことの二択なら、ジャンクフードを食べてもかまいません。短期的にジャンクフードを大量に食べるのは、長期的な飢餓状態より健康にいいのです。

自力で食事への過度なこだわりを超えることができるのなら、超えてください。

できないのならできないなりに、今日は自分の中で食べてもいいと許したものを許せる限り食べて、明日からまた自分を縛る食事のルールを超えることを挑戦してみてください。ハードルは日に日に低くなってきます。目標はなんの制限や心配もなく食べることです。脳に「飢饉なんてこないよ」と教えこまないといけません。

医学的·道徳的な理由もなく食事制限をしているのであれば、ちょっと今はやめてみてほしいです。いつかまた制限したくなったら制限すればいいのです。グルテンアレルギーじゃなければ、グルテンをとってください。癲癇患者でなければ、ケトンに入る必要はありません。もしお肉を食べるのに罪悪感を感じるのなら、すこしの間だけ我慢してほしいです。飢餓反応はこれらの食事制限を利用して、自分を正当化しようとします。飢餓反応に手札をこれ以上あたえないでほしいです。普通の人向けのダイエットは、飢餓反応で脳をおかされている人には通用しません。

回復期間中、非常に強い空腹を感じ、食べすぎる人もたくさんいるでしょう。大丈夫です。それは制限することへの逆戻りの口実にはなりません。また、強い空腹や暴飲暴食することは、飢餓実験でもくりかえしみられています。飢餓状態からぬけたしたら自然と消えていきます。

回復と運動

回復期間中に運動してもいいでしょうか?よほどの理由がなければ、やめたほうがいいかもしれません。

体育推薦入学の学生で、運動することに奨学金がかかっている人なら、しかたないので運動してもいいのですが、前より運動量をうんと減らしてみてください。

「健康のため」に運動しているのなら、すこしの間休んでください。回復したあと運動を再開すればいいのです。短期的な座りっぱなし生活は、長期的な飢餓状態より健康的です。

運動についてのこだわりをやり続けることは回復の妨げになります。もし昨日運動するのを我慢できなかったら、今日の運動量を減らしましょう。くりかえしますが、運動しなくてはならないという焦燥感も体重の増加につれやわらぐでしょう。

強迫行為(OCD

運動の習慣が強迫行為に近いばあい、それらの行為を完全に止めるようにがんばらなければならない。これらの行為は摂食障害を再発させる可能性が高いからです。

ぼくは何かの運動や活動をしようとする時、このテンプレートを使うようにしています:

「〇〇分後戻ってきます。〇〇ため、〇〇をしてきます。」

もしとても大きいな声でいえない内容になっていたら、その〇〇をしようとするのを我慢したほうがいいでしょう。例えば、

10分後戻ってきます。犬がねだっているのため、犬の散歩をしてきます。」:OK

30分後戻ってきます。午後雨になるため、雑草をきれいにしてきます。」:OK

15分後戻ってきます。さっき除雪したのにまた1ミリもつもったため、車道の除雪をしてきます。」:ダメ!

2分後戻ってきます。昨日と同じくらいの階段を登らなければならないため、階段登りをしてきます。」:ヤメて!!!

これらの習慣はとても狡猾なので、気をてけてください。エレベーターに乗るのはなんとなく間違っているように思っていつも階段から行っているのなら、エレベーターを乗ってみてください。15分以上歩かなければならない場所に行くときは、自転車やバスで行ってください。電話しながら歩き回っているのなら、座ってください。このような習慣を頑なにまもることで回復が長引いてしまいます。

その他

過去の虐待やトラウマ、その他の精神的ストレスが食事の制限と運動衝動をひきおこしているばあい、体重増加の後にそれらの問題にちきんと対処してください。ストレス対策は再発を防ぐはたらきをします。

摂食障害をなおしたように、ほかの問題についても、カウンセラーなどと協力して対処することも大事です。さいわいなことに、飢餓状態から抜け出したあと、それらの問題に対しての対応力も上がります。

 

摂食障害から回復したら

摂食障害から完全に回復したら、今までもっていた食事や運動についての自分ルールが重要性を失い、もはやルールでもなんでもないようにみえてきます。一日中食べ物のことばかり考えることもなくなり、数時間食事を取らなかったら自然とおなかがすくようにもなります。ごはんを食べること、「許されていない」食べ物を口にすること、食事や運動の計画やペースがみだれることなどについて、イライラしたり不安になったりしなくなります。

回復は、体重が十分に増加し、飢餓反応がおわったあとにやってきます。まだ自分の頭が食べ物と運動でいっぱいいっぱいの状態であったら、もうしばらく回復をつづけてみましょう。

摂食障害になる前のことおぼえているかもしれませんがーおわりのないスターベーションからの解放はすばらしいものです!とはいえ、体重が増えたらすべてうまくいくということではないのです。摂食障害による食事や運動への執着は脳にふかくきざまれています。その跡は完全に消えないかもしれないが、すくなくとも回復前よりは無視しやすくなるでしょう。

高めの体重こそ万能薬というわけではありません。体重が増えてもいきなり自分の体が好きになるわけでもないのです。回復前に抱えているほかの問題は、回復しても消えたりしません。自分のみためが気に入らなかったり、仕事内容がいやだったり、摂食障害からの回復はこのような問題もいっしょになおしてくれるわけではありません。

しかしさいわいなことに、飢餓状態から脱け出せば、これらの問題に対処するリソースも増えてきます。論理的にものごとを考えるための時間や、忍耐力、脳のキャパシティーが増えるからです。

ぼくのばあい、数々のばかけた自分ルールから解放されたいという思いだけで摂食障害をなおそうとのりだしました。しかしそれ以上に、回復のプロセスで手に入れずつあるものー家族や友だちとすごす時間と心の余裕ーがぼくの回復の決心をいっそう強いものにしました。

 

よくある質問 

Q. 私の摂食障害は具体的にどういう障害でしょうか?

A.  わかりません。精神疾患の分類は十年ごとに変わるようなものです。このガイドの内容は、現代的な手法をとった専門家の治療のしかたをぼくなりにまとめたものです。

ライフハック:いやな誤解を招きかねないので、自分に精神疾患のレッテルを貼らないほうがいいです。人には「新陳代謝が不調です」といっておきましょう。そのほうが正確ですし。

これから数十年もたてば、摂食障害の治療はうつ病よりな方法ではなく、むしろ1型糖尿病のようにあつかわれる日がくると信じています。つまり、身体症状をひきおこす精神疾患ではなく、精神的な不調をもたらす身体疾患として、治療されることです。

普通の低体重な少女より、アスリートの方がよりよい治療にアクセスできるのが現状です。専門家の治療をもとめるとき、男性のばあい「運動による相対的なエネルギー不足」、女性のばあい「女子選手三主徴症候群」(Female Athlete Triadに話をよせてみてください。

このガイドは主に拒食症の症状についてふれているので、言及していなかった摂食障害の症状もあります。神経性大食症(bulimia)過食性障害(binge eating disorder)などもしかしたらご存知かも知れませんが、流派によればそのほかにも「回避·制限性食物摂取症」「オルトレキシア」「特定不能摂食障害などいろいろの分類法があります。

 

Q. ほかの症状ってなんですか?

A. 摂食障害の症状に目をとおすのはおもしろい体験です。症状は数多く、その中から自分だけだと思っていたくせのようなものもあるかもしれません。意図的にしていると思い込んでいること(あるいは意図的にしているのかもしれませんが)や、かえたくないことなどもあります。

先の質問について「身体醜形障害」にふれませんでした。一般的にそれは「やせてるのに自分はふとってるとかん違えする」というふうに思われているが、実際「体について不安やストレスを感じているが、ほかの人にはその不安が理解できない」と解釈したほうが適切です。飢餓状態が身体醜形障害をひき起すと説明する理論がいくつも存在するが、個人的にそれらの理論はあまり説得力がないと思います。

女性のばあい、無月経も症状の一つとしてよくみられます。体脂肪がおちると生理がとまる女性が多くいます。女性にとっては危険信号の一つですが、男性はその恩恵を受けられません。

エネルギーを「ため込む」傾向は、ほかのところー特にお金の使い方ーに向けられることもあります。お金をぞんざいに扱わないで、借金をさけるなどいい方向にはたらくこともあれば、お金を使うのをもっぱら拒否して、いたっては盗みたいと思うようになるなど、悪い方向にもうごきます。

強迫行為(OCD)ににた症状は比較的に気づきにくいこともあります。たとえば、多く歩くためにスーパーの中でわざと非合理的なルートをとおることや、たつ時間をつくるために食洗機をもっているにもかかわらず入念にお皿を手で洗うこと、ベビーカーを持っていて、あるいは子供はもう歩けるのに、そのこをかかえて歩きまわることなども症状になります。

体重がふえるのにつれ、上述の症状の多くも消えていくでしょう。しかしなかでも強迫行為の解消は比較的に努力がいるものかもしれません。行為を解消して障害の再発を未然にふせぎましょう!

 

Q. 回復できなかったらどうなるの?

A. 長期的な栄養不良にはたくさんのおそろしい弊害があります。それを列挙することもできますが、飢餓反応にハイジャックされた脳にはそんなことはおかまいなしでしょう。脳は短期的なことにしか目を向けられていないからです。先に飢餓反応を解消しましょう。そうしたら回復の意欲もでてきます。順番をまちがってはいけません。

とはいえ、いちおういくつかの弊害を紹介しておきます。栄養不良状態がつづくと、ストレス骨折や坐骨の骨折などのけがのリスクが高くなり、髪の毛や歯もおちるでしょう。命の危険にも晒されてしまいますー摂食障害の患者の自殺率は一般とくらべて非常に高いと言われています。

それと、あなたは摂食障害で苦しんでいます。苦しむのはよくないことですよ!

 

Q. 「再摂食」(re-feeding)ってなんですか?

A. 摂食障害治療の「食事をふやして体重をふやす」手法のことです。一般的基準では低体重と判断されなくても、再摂食が必要です。

ぼくも、最初に調べた時にとまどいを感じました。非常にやせているわけではないので再摂食の必要はないと思いこんでいましたが、それはまちがいでした。

「再摂食」は「体重回復」ともいいます。「体重回復」というと、決まったところまで体重を増やさないといけないというふうに聞こえるが、それもちがいます。精神的に回復するところまで体重をふやすのです。

体重が極端に低い方にとっては、専門家の監督なしに再摂食するのは危険かもしれませんーこれを体重をふやすのをこばむ口実にしないでください。このガイドは極端な低体重の人を対象にするものではありません。

 

Q. 心理的な空腹」(mental hunger)ってなんですか?

A. 頭の中で食べ物や食べ物と関係のあるものごとでいっぱいな状態のことです。

一部の人は、自分の食べたものを頭の中でくりかえし思い出したり、食べたもののカロリーや栄養価が頭からはなれなかったり、次は何食べるか常に考えたりします。

また、料理本やレシピー、スーパーに行くことに非常に熱心で、食べもしないのに頭の中で食べたいものの妄想をしたり、買うつもりのない食べ物をじっとみていたりする人もいます。

あるいは、ほかの人が何を食べているのか、体重がどれくらいなのかに非常に関心を持ったり、家族がたくさん食べているのか神経症的に心配したり、恋人に食事を与えることに夢中だったりするのも、心理的な空腹のうちです。

ぼくのばあい、心理的な空腹は身体的な空腹のかわりという役目をはたします。かってな推測ですが、身体的な空腹が食べる行為につながらないので、体がほかの手段も利用してぼくを食べさせようとしていたのです。もっと専門的には、脳のシグナルフィルタリング作用で心理的空腹が発生するという説があります。

ぼくにとって、食べ物が頭をはなれないのは飢餓状態のあらわしというのはおおきな気づきでした。ぼくは自分は「病気」だと思えたのはこの気づきのおかげでもあります。もし身体的な空腹を感じないのなら、心理的な空腹が発生したときに食事をとってみてください。

 

Q. 「エネルギー赤字」(energy deficit)ってなんですか?

A. 「エネルギー赤字」は、「食事を増やし、運動を減らし、体重を増やす」ことによって修正されます。

一日の中で、摂取カロリーより消費カロリーのほうが多かったら、その一日は「エネルギー赤字」だったということができます。理論上、体重が少し減るでしょう。

しかし一日という単位はあまり意味がありません。一週間も食事をとらず、その次の週大食いしたら、この二週間の間ではエネルギーの摂取と消費に差がないばあい、エネルギー赤字にはなりません。したがって、二週間前と二週間後とは体重はかわりません。二週間を、何ヶ月間、何年間、何十年間というタイムスパンに置き換えることもできます。

ということは、一人の人間は「長期的なエネルギー赤字」と「短期的なエネルギー黒字」という二つの状態を同時にもつことができます。たとえば、11日時点で65キロの人がいるとして、その人が71日には55キロになり、121日では60キロになったとします。一年間で体重が5キロおちたので、7月から12月までエネルギー黒字にあったにもいえるし、一年間のエネルギー赤字にあったということもできます。

個人的に長期的なエネルギー赤字のばあいには「体脂肪赤字」を、短期的なエネルギー赤字のばあいには「エネルギー赤字」という使い分けをしてほしかったのですが、でもまあ、経済学を学んだ人じゃないと、「水準」と「速率」の区別がしがたいかも知れません。

 

Q. 精神状態がよくなる前にわるくなったりしませんか?

A. これごもっともな質問です。ぼくも懸念していました。摂食状態からの回復では、食事や運動についてへんなルールからの解放、一日中食べ物のことばかり考えることの解消など、精神状態の向上を目指します。でも飢餓反応は無視されたことでしかえししたりしないでしょうか?

一部の人にとって、その答えはノー。体重が増えればことは対応しやすい方向にいきます。食事やルールにかんしてのルールがゆるくなり、食べ物についてえんえんと考えることも少しはへります。よって体重をさらにふやすことが比較的にしやすくなり、いつか症状も完全に消えるでしょう。

しかしもう一部の人にとっては、答えはイエス。飢餓反応が回復しようとする彼らにしかえして、ストレスをふやしてしまいます。食べることや体重増加、他人のコメントなどさまざまなことがストレスの原因になります。あまりいい状況ではないです。

そのストレスがこわいのはまったくおかしくなく、もともとこわいものです。しかし心配しないでほしいのは、その恐怖心にうちかつ必要などないです。回復に必要なのは多く食べ、運動を減らし、体重を増やすことです。そうすれば、恐怖もきえていきます。

 

Q. 回復はいいことしかないでしょうか?

A. 上の質問への答えのとおり、回復はいいことばかりではありません。

体重増加によるストレスもそうですが、回復にはとてもきもちのいいものとは言えないこともたくさんついてきます。ぼくが直面した問題をいくつかならべてみます。

一つ大きな問題は胃腸の不調です。慣れている量よりはるかに多く食べなければならないことは胃腸にとっても大きな負担になります。また、慢性的な飢餓や半飢餓状態は胃腸の動きを遅くしてしまい、消化のスピードの回復には時間がかかるばあいもあります。食事量を小分けしてとったり、消化しやすい栄養シェイクをとったりして、人々は対策をうっています。

もう一つの問題は原因不明な痛みです。程度の軽いいたみを体験する人もいれば、比較的に強烈な筋肉痛や関節痛にみまわれる人もいます。ぼくは数日間足のつりがあったが、それを何週間も体験した人もいます。浮腫による痛み以外、回復期間中に体がいたむ現象についてあまり研究がないようですが、とにかくしっかり休養することが大事でしょう。

睡眠の質が低下する人もいます。これは運動量の減少やカフェイン摂取・ストレス全般による可能性があります。睡眠不足で不安やイライラしやすくなるため、対策をうったほうがいいでしょう。ぼくはカフェインをうんと減らすことで睡眠の質を高めました。

一時的な不調があっても、回復をはじめて数ヶ月後には不調がやわらぎました(また最初の不調にのりきってよかったとも思いました)。このトピックについて、Rehabilitate, Rewire, Recover!Sick Enoughなどの本にはもっと情報がありますので、原文の「参考資料」のところをみてみてください。

 

Q. 摂食障害からの回復は性格の「いいところ」をなくしてしまうんでしょうか?

A. そんなことありません。そしてもし「いいところ」がなくなったら、また飢餓状態にもどればいい話です。

ぼくも自分の意志の強さや辛抱強さは、きびしい食事制限と運動をがんばってきたからこそ手に入れたもので、自分の健康やキャリアの成功には必要不可欠だとおもっていました。摂食障害を手ばなしたら自分は悪い親、悪い夫、悪い従業員になると思っていました。

しかしここに朗報です。摂食障害は脳の20%ほどのリソースを食事制限や運動に使っています。回復ののち、そのリソースを自分が本当に大事だと思っているものにさくことができます。回復はむしろあなたをよりよい親、よりよい配偶者、よりよい従業員にするでしょう。

一つ注意してほしいのは、摂食障害はもっともらしい価値観を利用して、自分を正当化しようとするものです。ビーガンやベジタリアンをするのが大事だと思うなら、ほかの方法で動物の権利促進をやってみてほしい。運転するより歩いたほうがいいという価値観を持っているのなら、ほかの方法で環境保護を頑張ってみてほしい。

自我免疫疾患の人に医者のいうことを無視してビーガンになるべきだという人はいません。足の不自由な人にスーパーまで歩くべきだという人もいません。飢餓反応が壊れている人も同様に無理しなくても許されます。

 

Q. 肥満は健康的じゃないはずでしょう?

A. 肥満は健康的じゃないです。しかし、食事や運動のきびしい制限をなおすことは肥満になると同等ではありません。完全な回復とは、食べ物について何一つ考えなくなると、よかれと思っていっている人もいますが、それは善意のうそだと思います。回復のあと、栄養や運動に気を配っても問題はありません。

とはいえ、肥満になりたくないことをいいわけに、回復期間で体重をふやさないようにするのはまちがっています。思っているより高めの体重までなってからようやく食事や運動についての執着がきえていくのが普通です。その後ダイエットしなくても体重は少しおちるはずです(上を参照してください)。これは実験や経験によっても証明されている現象です。一時的にBMI26とずっとBMI40にいるのは全くちがうことです。

BMIガイドラインは飢餓反応が暴走した人には適用されません。摂食障害にしがみついてBMI18(低体重)からBMI23(標準体重)までいったりきたりするより、BMI25(高体重)に安定したほうがずっと健康的です。

 

Q. BMI指数はデタラメだと思いましたが

A. BMI指数はデタラメです。専門家がよく使う概念なのでもちだしたまでです。BMI指数は合理的ではなく、物理的な意味をもたず、また身長の低い人や高い人、アスリートには適用しません。BMI指数はバカけたデタラメです。

回復の目標はBMI18.5(標準体重の中の低いほう)になることではなく精神状態の向上、つまり食事と運動のコントロールからぬけ出すことです。その目標の定義が曖昧でわかりづらいと思うのなら、とりあえずBMI22を目指してみてください。

 

Q. あなたは何者?なんでこれを書いたの?

A. ぼくは何者でもなく、ただのネットユーザです。ぼくは子供の時からヘンテコな食事制限や運動にこだわっていることには自覚していたのですが、まさか拒食症だとは思ってもみませんでした。拒食症って若いバレリーナさんがなるものでしょう?

何年も摂食障害について調べてきましたが、あまり役立つものに出会えませんでした。今ある摂食障害の情報は、若い女の子が対象で(ぼくは男です)、摂食障害はトラウマや子供の時に受けた虐待が原因だと主張します(ぼくにはないのです)。また、その治療は自分の外見や体を受け入れることに重点がおかれ(ぼくは別に自分の体がいやで拒食になったわけではない)、非常に体重の低い人に焦点をおいています(ぼくはBMI指数が低いがいちおう標準範囲内でした)。などなど。

拒食症についての一つの生物学的な解釈を読むことで、ぼくの意識がガラリと変わりました。実験であのヘンテコな食事制限と運動衝動を再現できるって?そして体重がもどったらそれらの行為もきえる?もっとはやくいってくれよ!

このガイドの最初のバージョンはぼくが回復に入って数週間のころに書きあげました。ぼくの回復にモチベを与えるようなことや専門家からかき集めてきた情報をまとめています。ぼくもネット上の見ず知らずな人にだいぶ助けられてきたので、その恩を伝えていけたらと思います。

 

参考資料

原文を参照してください。

https://sites.google.com/view/the-no-nonsense-guide/guide